姫乃たま『職業としての地下アイドル』感想・書評

 

『職業としての地下アイドル』という本を手に取ってみた。

 

この本は姫乃たまさんという現役の地下アイドルの方が書いた本である。

この本を手に取ったのは、以前僕がとある地下アイドルのファンだったことや、最近わけあって地下アイドルに再び興味を持ち始めていることが理由である。

 

ひとまず簡単に感想を書くと、読みやすい文体であったし、姫乃さんの体験談に加え実施したアンケートから数字の上でも地下アイドルおよびファンの実態に迫っており、「地下アイドル」という文化現象の社会学的な考察として一定の価値があると感じた。

本書の帯には社会学者の宮台真司さんのコメントが掲載されている。

現役地下アイドルが幾多の数値データを、自分の実存を賭けて解釈していく本書は、狭義の「地下アイドル論」を遙かに超えて、芸能の歴史と本質への最高を迫るだろう。誰もが成し得なかった社会学的な考察だ。 

 地下アイドルに少しでも興味がある方は読んでみて、損することはないと思う。

 

また、本書は単に地下アイドルの考察としてだけではなく、若者一般や現代社会を考える上でも役に立つと思う。

本書に繰り返し書かれていることであるが、地下アイドルは「普通の女の子」が多いのである。アイドルというと、人前に出るのが好きで、目立ちたがりで、明るくて学校では中心的な存在(スクールカーストの上位)の人の集まりなんだろうなとイメージしがちかもしれないが実態としてはそうではないのだ。

例えば、本書では地下アイドルへのアンケートの結果として次のようなものが載っている。

地下アイドルを対象としたアンケートでは、「あなたは学校でどのくらいのスクールカーストに属していましたか。あるいは属していますか」という質問に対して、

「上」と「中の上」が27.0%

「中」が53.9%

「中の下」と「下」が19.1%

と回答していました。

一方で、2016年にオウチーノ総研が一般の人たちを対象にした「『学校生活』に関するアンケート調査」では、「あなたは『スクールカースト』のなかで、どの層にいたと思いますか?」という質問に対して、

「最上層」「上層」が33.0%

「中層」が43.7%

「下層」と「最下層」が23.3%

と回答していたのです。 

これを見れば分かるように、地下アイドルの女の子たちの分布と一般の人達の分布はほとんど同じであり、地下アイドルが実は「普通の女の子」たちであるということを端的に表している結果だと言えると思う。

この本を読み進めてくと、地下アイドルの女の子たちというのは「普通の若者」たちと同じような悩みを持っていることが分かる。

承認欲求であったり、アイデンティティに関する悩み、居場所が欲しい、というような悩みなどだ。

また、地下アイドルの増加はSNSの普及・拡大とも密接な関わりがあるが、地下アイドルの子たちがSNSでやっている仕事(地下アイドルにとってはSNSの更新も立派な「仕事」である)は、自撮り写真を載せたり日常生活のことを書いたりなど「普通の女の子」が「遊び」でやっていることの延長線上にあるという。

「SNOW」などの写真加工アプリの普及や、SNSや動画アプリを通じて、写真や動画を投稿した経験のある女子高生の割合が68.9%に上るという事実と照らし合わせると、地下アイドルの活動は「可愛く見られたい、誰かに認めてほしい」という多くの若い女の子が持つ欲求を満たすものであるということらしい。

このように考えてみると、地下アイドルの考察というのはほとんどそのまま現代に生きる若者の考察にも直結しているように思う。

 

ここまで他人事のように書いてきたが、上記に書いたような地下アイドルの悩みや欲求というのは実は僕自身にもあてはまることだ。

アイデンティティに関する悩みや居場所が欲しいというようなことはまさに今の僕自身が抱えているものであるし、承認欲求という点からしても例えばこのブログを書いていることはその発露であると捉えることができると思う。

コミュ障で友達が少なく、パッとしない僕と可愛らしく一見華やかな地下アイドルは客観的に見れば対照的な存在でしかないだろうが、根っこの部分で似通っていたり共通する部分があるのである。

(僕がどんな高校生、大学生であったかということについては以下のものをご参照下さい)

高校時代

todairyunen.hatenablog.com

大学入学後

todairyunen.hatenablog.com

 

 本書の中に記されている次のアンケート結果は意外に思われる方も多いかもしれない。

「いじめられたことがある」

地下アイドル:52.1%

一般の若者:11.7%

「いじめられたことが少しはある」

地下アイドル:28.7%

一般の若者:26.7%

「いじめられたことはない」

地下アイドル:19.1%

一般の若者:61.6% 

この結果を見ると、地下アイドルがいじめられたことのある割合は一般の若者に比べ有意に高いことが分かるだろう。

著者である姫乃たまさんも本書のプロローグにおいて、いじめられた経験を告白している。

姫乃たまさんによれば、

「地下アイドルの性質は内気な目立ちたがり屋」 

 であるという。

僕自身のことを少し語らせてもらうと、コミュ障でぼっち気味だった僕はどちらかといえば明らかに「いじめられる側」であった。中1の頃、毎日のように「学校に行きたくない」と思っていた時期もある。当時の僕は「いじめられている」という認識ではなく「いじられている」という風に思っていたが、自分がいじめられるような人間だと思いたくなかった故かもしれない。

また、僕自身も「内気な目立ちたがり屋」に該当するのではないかと思う。

アイドルの子とは違って容姿で目立ったり、人前に出て目立つことは出来ないものの、最近の僕は「普通」とは違ったことをやりたがったり、主体的に何かをやろうとすることが多かったからだ。

僕の場合は「目立つ」ことを目的にしているわけではないつもりではあるが、このあたりに地下アイドルの子と共通したものを感じた。

一見、自分とは全然異なる存在にも思える地下アイドルに近しいものがあったということは驚きだった。こうやって考えると、地下アイドルの女の子たちというのは僕も含め「普通の若者」の縮図のようにも感じた。

 

また、なぜ「普通の女の子」たちが地下アイドルになりたがるのかもよく理解できる。

地下アイドルの活動は、自分が「何者」かでありたい、特別でありたい、他人から認められたいという欲求を満たしてくれるものであるからだ。

 

しかし、時として地下アイドルの活動がかえってアイデンティティを見失わさせるケースも起きるらしい。

著者である姫乃さんもこの状態に陥り、引退する一つの理由にもなったという。(姫野さんはその後また復帰し、現在も活動しています)

ファンに好まれそうなことを追求するあまり、どんどんと自分を殺しているような感覚に陥り自分を見失ってしまったというのである。

復帰後の彼女は、「自分らしく」あることを意識するようになった。結果として、彼女の強みや個性を活かして地下アイドルとしてだけではなくライターとしても活動するようになり、この本の出版などに至った。

 

持論だが、復帰後の姫乃さんの「自分らしさ」を追求した活動スタイルはこれからの社会を生きる上で一つのサンプルケースになると思う。

「終身雇用で同じ会社で定年まで働いて、後は年金暮らし」というモデルケースが崩壊しつつある今、現代に生きる若者は個性や強みを持ち「不安定」な社会の中で強く生きていくことがより求められていると思うからだ。

僕自身もそういうことを意識しているし、「自分らしい」生き方を模索中だ。

アイドルにしても一般人にしても個を強く持って「自分らしさ」を追求する人は増えていくだろう。

 

 色々話が散らかってしまった。

『職業としての地下アイドル』の感想のまとめを最後に書くと、姫乃さんが地下アイドルとして経験したエピソードは非常に興味深く面白かったし、地下アイドルの実態を知る上でこれ以上ない本だと思うし、現代に生きる若者一般について考える上でも役に立つ本である感じた。

また、このブログでは地下アイドルの子たちはどんな人間なのかということを中心として、本の感想を超えて僕自身のことや僕なりに考えたことをつらつらと書いてしまいましたが、この本は地下アイドルの現場の様子や雰囲気なども詳しく書いてあるため、地下アイドルやファンの実態に少しでも興味ある人にはオススメです。

ということを付け加えた上で、締めくくりとさせて頂きます。(笑)

 

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